漁業資源現存量調査 ~貝類~

潜水士(環境ダイバー)による、漁業資源現存量調査(貝類)について、ご紹介します。

漁業資源現存量調査(貝類)の目的は、どんな種類の貝がどのくらいの量や大きさで、特定の水域に生息しているかを調査して、
貝類の生息状況の現状を把握することになります。

この調査結果を、漁業資源の管理計画(制限なく捕獲できるのか、もしくは数が減っているので規制が必要なのか)に役立てたりします。

通常、現地の漁業者さんが漁(素潜り漁など)をする水域(漁業協同組合で管理する水域のこと)で、調査を実施します。
本調査を行う際には、特別採捕許可という、都道府県知事による許可を受ける必要があります。

特別採捕許可の申請には、以下の情報の記載が必要です。
(1)採捕する水産動植物の種類及び数量 (2)採捕の区域 (3)採捕の期間 (4)漁法 (5)使用漁具
(6)採捕に従事する責任者の住所及び氏名 (7)使用船舶 (8)許可期間 (9)制限又は条件
※制限又は条件・・・採捕した水産動植物は、試験研究の用途以外の目的に供してはなりません、など。

漁業者さんが管理する水域で、大事な海の宝を採取しますので、許可発行が厳重なのは当然ですね。
ですので、その水域で許可なく、貝を採って水揚げしてしまうと、密漁という犯罪になります
一般の方は、くれぐれもご注意下さい。

さて、調査の内容を、詳しくご紹介します。

 

潜水調査の準備中

潜水調査の準備中

潜水士(環境ダイバー)が、船上で潜水機材を装備し、入念な準備をします。

水中ボンベは容量14リットルで、陸上での重量は約17kg。
小学生を背中におんぶしているのと同じで、重たいです。
これ1本で、水中で約1時間作業できます(ハードな作業の場合は30分程度)。

水中ボンベを2つ連結した、さらに重たい水中ボンベもあり、作業をする海域の水深や作業時間を考慮して、
使用するボンベの大きさを決定します。

潜水作業を行うときは、海底のとがった岩や危険生物などで指を怪我をしたりするので、特に肌を出さないように注意します。
ウェットスーツやドライスーツを着て、手袋などの保護具で手を守ります。

入念な準備の後は、周りをよく見て海に飛び込みます。
潜水士は2名1組で潜りますので、水面に他の潜水士が待機していないか確認が必要です。

焦ったりして、水面を確認せずに飛び込むと、水面待機中の潜水士に重たい水中ボンベごと衝突したり、
海面を漂う流木に激突したりして、大怪我をしたりさせたりするという、事故につながる可能性がありますので、
注意しないといけません。

さぁ! 水中で調査を行いましょう。

 

水中で貝類の採取中

水中で貝類の採取中

漁業資源現存量調査(貝類)の手法には、目的に応じて大きく2つあります。
定量採取・・・予め調査範囲を決めて、その範囲を採取する方法
定性採取・・・調査範囲を決めず、潜水時間が許す限り採取する方法

この現場では、定量採取で調査を行いました。
長さ10mのロープを海底に張り、そのロープの右左1mずつの範囲の貝を探して、採取します。
つまり、10m×2m=20㎡の範囲を調査するわけです。

20㎡の範囲の中に、どんな貝がいるのか?
調査員(環境ダイバー)は、視覚をメインに、感覚を働かせつつ、探します。

岩盤の上に鎮座している貝もいれば、岩の裏側にくっついている貝もいます。
調査員は、海女さんの漁と同じように、貝を探し回ります。

 

ときには、皆さんも大好きで、日曜日の夕方にテレビで良く目にする↓↓↓↓もいますよ~。

岩の上でくつろぐ(?)、サザエさん

岩の上でくつろぐ(?)、サザエさん

当社にいるような熟練の調査員(環境ダイバー)であれば、貝が居る場所というのが、感覚で分かります。
海藻の生え方、岩や底質の形状、海水の流れ方などから、総合的に判断します。

貝は種類に応じて、住む場所が異なります。
アワビなどは潮通しのよい、海藻の多い岩の隙間にいますし、タイラギは砂泥地に突き刺すように生息しています。

このように、コツをつかむと、仕事の効率化や良い調査結果に結び付きます。

さて、以上のような手法で採取した貝は、採って終わりではありません。
まずは、この貝はサザエ、あの貝はギンタカハマというように、種類を見分けます(同定作業)。
なかには外見の細かい部分でしか区別のつかない、同定作業が難しい貝もいるので、図鑑は必携です。

次に、種類ごとに殻の大きさ(殻高、殻幅)、重量などの計測作業をします。
このように同定、計測したデータをもとに、漁業資源現存量調査報告書を作成します。

報告書では、色々な専門用語を使用して、作り上げていきます。
今回取り上げた貝類は、水生生物の区分上、底生生物 または benthos(ベントス)と総称されます。

他に、魚類など水中を遊泳するものは、遊泳生物 または nekton(ネクトン)
健康食品で話題のミドリムシのように、水中を漂うものは、浮遊生物 または plankton(プランクトン)と、それぞれ呼ばれます。

報告書の中には、これらの生物がどう関連しているか、記入することもあります。

最後に、漁業資源現存量調査(貝類)では漁業価値が高く、高額な貝類を採取しますので、調査を担当する人間のモラルも大事です。
ポケットにしまってしまえば、好きなだけ採取して、どうするも調査員の自由です。

残念ですが、昔は良くないことも、色々あったそうです。

もちろん、当社ではそのようなことはしません。
採取した貝類は、船の上や陸上で、同定や計測作業をした後、静かに海に返します。

当社では調査に対する心構え・コンプライアンスなど、定期的に社内研修を行い、指導・教育・情報の共有を徹底しております。
見えない所こそ、しっかりとしたいですね。