河床材料調査(容積法)の様子

川の様子

河床材料とは、川底に堆積している巨石や石、砂などのことです。
一般的な河川では、上流から巨石→大きな石→小さな石→砂や粘土 の順番で構成されます。

河床材料調査の目的は、どのような粒度分布をもつ土砂がどこからどのように流され、どこに堆積するかなどの
河道計画(大雨が降ったとしても、堤防内の川に安全に水が流れるようにする計画のこと)の基礎資料を得ることです。

具体的には、定点で定期的に河床材料構成の変化状況を把握することで、大きな石が減少した、砂が増加した、
などの河川特性が分かり、築堤(堤防を作ること)や引堤(既設の堤防を取り壊して民家側へ移動させること)、
嵩上げ(かさあげ。堤防を現状よりも高くすること)や根継ぎ(河床の低下等により護岸の根入れが不足する場合に、 護岸の深さを継ぎ足すこと)、
他に河床の掘削・浚渫や河道の直線化などの河川改修方法を検討・実施して、国民の命や財産を守れるように、川の水を安定して流すように調整します。

※前回調査で石だった箇所が砂になっていたら、川の水の流速が緩やかになり、河床が堆積傾向にあると言えます。
逆に砂だった箇所が石になっていれば、川の水の流速が早くなって河床が洗掘傾向にあり、その下流まで水の勢いが
増したと言えます(水の流路が以前と変わり、河道の形状が徐々に変化することもあります)。

河道内に堆積する土砂(河床の堆積がより進むと浚渫が必要となる)

既設護岸前面に設置された根継工(河床の低下が進み、護岸の補強が必要となった)

【河床材料調査の手法】 ※粒度分布調査とも言う
大きく4種類あります。

<直接採取法>
現地にて試料を採寸・採取し、小径試料を分析室に持ち込んで粒度分布を分析する方法
・容積サンプリング法(=容積法)

<表面サンプリング法>
河床表面に見える河床材料のみを対象とし、鉛直方向には表層と同様な粒度構成が連続しているものと過程した上で、
現地にて試料を採寸・写真撮影などし、粒度分布分析に相当する結果を得る方法
・面積格子法
・線格子法
・写真測定法(=画像処理法)

この記事では、河床材料の最大径が100mm程度の場合に、最も精度の高い粒度分布が得られる容積法についてご案内します。

河床材料調査の使用機材

これが、河床材料調査(容積法)の現地作業で使う主な道具です。
スコップは必須です!
※方形枠(赤白枠の内側に赤色の糸を格子状に張ったもの)のみ、河床材料調査の内、面積格子法のものになります。

容積法では基本的に人力作業となり、土嚢に現地の石や砂を詰めて持ち帰り、分析室でその粒径分布(河床材料の大きさ毎の分布)
を知るためにふるい分析をします。

場所により胴長を着たり、ボートを使用したり、水中調査のために潜水士を使用することもあります。

 

調査場所の選定の様子

河川砂防技術基準調査編(建設省)では、調査地点の設定を以下のように定めています。
・河川の縦断方向に対して1km間隔
・1断面について3点以上(左岸、右岸、中央など)
・調査回数は、原則として3年に1回
・支川の合流点など、局部的に河床材料の変化の激しい所では、実状に応じて間隔を決定

調査地点選定の際には、周囲に特異な河床材料がない、平均的な箇所を選ぶことが大事です。
上流から石、砂、石と不定期に繰り返すような箇所は、調査点として適切ではありません。

現地では河川の全体が見れませんので、パソコンで最新の航空(衛星)写真から、
堰の位置、河床の堆積状況や石の大きさ、樹木の繁茂状況、護岸の整備状況などを確認して、
調査候補地点を先に選定すると業務の効率化につながります。

これらの作業を先に進めた上で、現地の下見で調査点を決定します。

 

方形枠(50cm×50cm)

調査地点を決定すると、方形枠を置いて調査にとりかかります。
まずはデジタルカメラで現況を撮影し、この地点を調査したとの証拠にします。
※方形枠を配置するのは、後々に分かりやすくする為で、必須ではありません。

 

陸上採取作業の様子

さあ、ここからが容積法の真髄、肉体労働です!

方形枠内の表層30cm程度の石や砂を取り除き、その下層(30~50cm程度)をスコップでどんどん掘り進めて、
ビニールシートに乗せていきます。

ジャリジャリ、ガシャ。
みんな、大体無言になります。

交代しながら進めると良いですね。疲れます。
手を挟んで怪我をしないように作業を進めます。

 

陸上採取作業後の様子

この程度であれば、大体20~30分程度で採取できます。
掘り方がまずいと、壁面がどんどん崩れ落ちてすり鉢状になり、穴が果てしなく広がりますので注意が必要です。

コツは、穴の端に立って作業しないことです。
作業性は落ちますが、ある程度垂直に掘れます。

掘った後は、埋め戻して採取作業は終わりです。

 

試料のサイズ・重量測定

試料を持ち帰って分析室へ

試料は粒径に応じて、以下の様に呼んでいます。
・75mm以上 石
・2~75mm 礫
・0.075~2mm 砂
・0.005~0.075mm シルト
・0.005mm未満 粘土

試料の粒径に応じて、以下の様に作業します。
・75mmより大きい ⇒ 現地で長径、中径、短径、重量測定
・75mm未満 ⇒ 約30kg程度を土嚢に入れ、分析室へ持ち帰る ※1

※1 試料を土嚢に入れる際には、四分法を用いる。
四分法…採取した石や砂を良く混合させて4等分したものの内、対角線の2つを土嚢に入れる方法

ふるい分析に必要な試料の重量は、最大粒径別に以下の様になります。
最大粒径 / 試料重量
・75mm / 30kg
・37.5mm / 6kg
・19mm / 1.5kg
・4.75mm / 400g
・2mm / 200g

 

浅い水深では、ウェットスーツ(胴長)で採取

中州がない場合、水中(浅い水深)の河床材料を採取することもあります。
陸上にある河床材料の採取とは違い、水流があり細かい成分が流出しやすいので、慎重な採取が必要です。

作業員は、ウェットスーツか胴長を着用します。
安全性は、全身が水に使っても大丈夫な為、ウェットスーツの方が高くなります。
胴長は胸より上が空いており、万一転んだ場合などは浸水しますので危険性が増します。

 

深い水深は、ボートと潜水士で出動

潜水士による採取作業

河床材料の引き揚げ

中州がない場合、水中(深い水深)の河床材料を採取することもあります。
陸上にある河床材料の採取とは違い、水流があり細かい成分が流出しやすいので、慎重な採取が必要です。

ボートを操船して、調査地点へ向かった後に、潜水士が水中に潜って作業します。
ボートは流速により、船外機を付けたり、手漕ぎで向かいます。

作業前に、安全にボートを組み立てられる場所の確保が必要です。

 

水中の河床材料

水中の河床材料についても、陸上と同様に現地で計測作業を行います。

 

<室内分析>粒度試験(ふるい分析)

<室内分析>粒度試験結果(粒径加積曲線)

試料を分析室に持ち帰り、ふるい分析をします。
試料を乾燥させて総重量を測った後、複数の網目のふるいにかけて、ふるいに残ったものの重量を計測して、
「礫」「砂」「シルト」「粘土」それぞれの占める比率を求めます。
この比率から、粒径加積曲線を作成します。

曲線の形状から、河床材料の粒度分布特性を知ることができます。
例えば、曲線が「S字」のように立っていると、河床材料の大きさ分布が狭い範囲に集中しており、土砂の締りが悪い地点になります。
左下から右上にかけてのなだらかな曲線の場合、分布が広い範囲にわたっており、土砂の締りが良い地点と判断できます。

このように河床材料調査を実施することで、河川改修に役立て、国民の安全を守ることができます。

ユーエルアクアティクス㈱では、河床材料調査の現地調査から粒度試験まで実施しておりますので、お困りの際にはご相談下さい。