農業用水路調査の様子2 ~用水路の点検~

農業用水路の種類については、↓に記事があります。

農業用水路調査の様子1 ~用水路の種類と特徴~

これらの農業用水路を長く使う(長寿命化)為には、現地調査(点検)を実施して、変状の状態と原因を確認する必要があります。
ここでは、その現地調査の様子をご案内します。

 

河川からの取排水施設、樋門

農業用水路の点検では、基本的に水路の中を歩きます。
水路横にある道路から下を覗きこんでも、水路側面にあるひび割れなどはよく見えないからです。

その水路を歩いていると、様々な施設を見つけます。

上の例では、樋門と呼び、農業用取水施設に区分されます。
奥に見える河川と農業用水路はつながっており、樋門を開閉することで用水が出入りする仕組みになっています。

樋門の点検では、①ゲートの開閉状況 ②腐食状況 ③下部の土砂堆積状況 などを確認します。
「樋門は確実に閉められ、開けられる」ことが大事です。

 

農業用水路にかかる橋

住宅や隣接施設に向かう為の橋も、水路上によく架かっています。

 

農業用水路にかかる橋の裏側

専門用語では、床版(しょうばん)と言います。
橋にかかる荷重や経年劣化により、この床版に変状が見られる場合があります。

ひび割れ、欠損、鉄筋の露出などが挙げられます。

 

水路があちらこちらに

水路を歩いていると、別の水路が合流している箇所があります。
この合流点では各所に水圧がかかりやすい為、変状が発生しやすい傾向があります。

特にコンクリート底版の磨耗や、付近の漏水に注意が必要です。

 

農業用水が流れる、地下トンネル

農業用水が地下トンネルを通る場合があります。
トンネルでは周囲からの漏水が発生しやすいので、注意が必要です。

 

代表的な変状-欠損

見て分かりやすい、大きな変状です。
中心に見える灰色のようなものが止水板と呼ばれるもので、コンクリートの接続部に入れ、農地と水路の水を遮断します。

コンクリートが一旦途切れ目地となり、この周囲は構造的に弱くなりやすい(水流を受けやすい)ので、上の写真のようにコンクリート表面が欠損してしまいました。
このような場合には近寄って見て、止水板の状態を確認する必要があります。

反対側が見えるようであれば、止水機能はありませんので早急な対策が必要です。

 

代表的な変状-磨耗

絶えず水が流れることで、コンクリート表面が磨耗していきます。
上の写真では表面のみの磨耗となり、これがひどくなるとコンクリートに入っている石(粗骨材)が見えるようになります。

そこまでの変状となると重症ですので、補修対策が必要になります。

 

代表的な変状-鉄筋露出

上の写真では、施工時から鉄筋の被り厚(鉄筋からコンクリート表面までの最短距離)が小さかったようで、コンクリート表面に鉄筋が露出しているのが見えます。
鉄筋がどんどん錆びるにつれ、コンクリートは鉄筋の支えを失って、水路の耐力がなくなっていきます。

 

代表的な変状-ずれ(目地部の段差)

周囲からの土圧や基礎地盤の劣化により、水路が傾いています。
水路の底版にひび割れがあったりしますので、周囲の状況確認がより必要な変状です。

 

代表的な変状-ひび割れ

止水板の端部からひび割れが発生しています。
時間が経つにつれ、コンクリートが剥離していき、水路の耐力がなくなっていきます。

 

代表的な変状-トンネル内の漏水

トンネルに周囲の地下水が流れ込み、漏水することがあります。
コンクリートに穴が開いており貫通し、過剰な水圧がかかっていますので、補修対策が必要です。

 

鋼矢板水路の腐食調査の様子

鋼矢板で作る水路には、施工幅が小さくて済むという特色がありますが、鋼矢板は年々腐食していきます。
ですので、あと何年持つのかを検討するために、鋼材の厚みを随時測定する(肉厚調査)必要があります。

また、鋼矢板に穴があると背後の土砂が吸い出されて、その上の道路の陥没の原因となったりしますので、目視による開孔箇所確認も重要です。

 

鋼矢板の厚みを超音波厚さ計で測定

水中でも使用できる超音波厚さ計を使って、鋼矢板の現在の厚みを測定します。
先に、鋼材表面の錆をきれいに落とす必要があります。

 

超音波厚さ計の校正状況

超音波厚さ計は精密機器で、調査の度に校正が必要です。
厚みが分かっているテストピースに、厚さ計の先端にある探触子を押し当て、表示される数値を確認しながら校正をしていきます。

これをしないと実測値が違ってきますので、絶対に必要な作業です。
物事は全て基本からです。

 

農地にたどりついた、用水

このような調査を経て、維持管理された農業用水路を用水が通り、田んぼや畑に供給されます。

農業は、我々人間にとって欠かせないもの。
美味しいお米や野菜、果物を生産するには水が不可欠ですが、このように供給されています。

農家の皆様にはまず感謝!
そして、若い世代にはこのような仕事もあることを知って頂ければと思います。