底質分析調査の様子(採泥器)

底質分析調査について、ご紹介します。

海や河川の自然環境調査というと、まず水そのものを調べる水質調査をイメージしますが、
その海底や川底(以下、水底と呼びます)の砂や泥の状態を調べる、底質調査があります。

底質の中に含まれる重金属・有機物・栄養塩の量や、種類を測定することで、底質が水に及ぼす影響を推測できます。

底質を分析するためには、まずサンプルを採取します。
調査したい場所が浅く、岸からスコップなどで直接採取可能な場合は、容易に採取できます。
しかし、人が直接入り込めない水底の底質を採取したい場合は、そう簡単にはいきません。

そこで、採泥器の出番です。
採泥器には、色々な種類があります。

海底を引っ張りまわして採取するタイプのもの。海底表面上を掴み取ってくるタイプのもの。
使用する環境(海・川・ダムなど)や、想定される底質(泥・砂・岩盤など)の違いによって、使用する採泥器を選定します。

ここでは、当社保有機材であり、調査で一般的によく使われる、2つの採泥器をご紹介します。
2つとも水底表面上を、掴み取ってくるタイプの採泥器になります。

スミスマッキンタイヤー型採泥器で底質調査中

スミスマッキンタイヤー型採泥器で底質調査中

調査員が重そうに持っていますね。

これは、スミスマッキンタイヤー型採泥器と呼ばれます。
主に、海洋で使用します。

本採泥器の使用方法は、以下のようになります。
①バケット部(写真の銀色部分)を開いた状態で、船上から水底へ下ろす。
②水底に着底したら、反動でバケット部が閉まり、底質を掴み取る。
③船についているウィンチや、人力で引き揚げる。
④掴み取った底質をバケットから取り出し、容器へ移す。
⑤容器内で、底質をかきまぜて、袋などに入れて密閉する。

本採泥器は、かなりの重量物(約20kg!)なので、船の上で取り扱うには力が必要です。
その分、水深が深い場所でも、まっすぐに降りて、水底に着底してくれます。
※機器の重量が軽いと、まっすぐに降りず、水底で横倒しになってしまうことがあり、うまく底質が採取できません。

使用可能な底質は、泥や砂の場所。
それ以外の底質が予想されるときには、本採泥器は使用できません。

あまりにも底質が柔らかい場所(底質が細かい場所)では、バケット部の先端が刺さらないため閉まらず、
逆に底質が硬い場所(底質が粗い場所)では、バケット部に石などが挟まり、閉まらず底質が取れません。

機器の選定も、なかなかのコツが必要ですね。

 

続いて、小型の採泥器を紹介します。

エクマンバージ型採泥器で底質調査中

エクマンバージ型採泥器で底質調査中

これは、エクマンバージ型採泥器といいます。

主に湖沼河川浅海域で使用します。ゴムボートの上ででも、使用可能なほど、小型な採泥器です。
重量も約5kgと、スミスマッキンタイヤー型採泥器と比べると、非常に軽く取り扱いがしやすいです。

本機の使用方法を簡単に説明すると、以下のようになります。
①バケット部(写真の銀色部分)を開いた状態で、船上から水底へ下ろす。
②水底に着底したら、ロープ沿いに専用の錘(おもり)を下ろす。
③錘がついた反動でバケット部が閉まるときに、水底の底質を掴み取る。
④人力で引き揚げる。
⑤掴み取った底質をバケットから取り出し、容器へ移す。
⑥容器内で、底質をかきまぜて、袋などに入れて密閉する。

 

これら採泥器によって採取された水底土が↓↓↓です。

底質サンプル

底質サンプル

スミスマッキンタイヤ型採泥器で採取した底質を、容器(バット)に移しています。
このサンプル(以下、試料と呼びます)を分析するため、専用の容器に取り分けます(この作業を分取と言います)。

 

底質サンプルの分取

底質サンプルの分取

バットに移した試料は、移植ゴテやスコップ(ガーデニングなどで使用しますね)で、専用の容器に分取します。

 

分取後の試料

分取後の試料

分取後の試料を、底質分析会社へ搬入します。
可能な限り、底質の性状を変化させないように、試料の状態を維持したまま搬入します。

気温の高い時期などは、クーラーボックスで保冷するなどして、適切に管理した状態を保つように心がけます。
正確な分析には、現場作業を事故なく終えるだけではなく、採取した試料を可能な限り、ありのままの状態で維持する必要があります。

以上のように、調査目的・内容にあわせて、使用する採泥器や採取する試料の量、など色々な項目をフレキシブルに考えねばなりません。
調査方法の策定など、お困りでしたら、お気軽に当社にお問い合わせください。

柱状採泥による底質分析調査については、下記リンクをご参照ください。

底質分析調査の様子(柱状採泥)