私たちが移動や生活をするのに欠かせない、道路。
その道路建設にあたり、周囲の環境に影響を与えることがないように水文(すいもん)調査を実施します。
ここではその水文調査とは何か、ご案内します。
ゴールデンウィークや正月、仕事にも使う高速道路。
日常で使用する一般道にしても、道路を建設することで、特に地下水の流れる状況が変わることがあります。
道路を建設する際には、山であれば盛土か切土をして、車が走る面を平坦にしていきます。
以下はその影響になります。
【盛土】
・湧水が閉ざされ、消失する
・降雨の地下への浸透量が減少する
・盛土材料からの汚濁物質の流出 ⇒ 井戸へ汚濁物質の混入
【切土】
・湧水箇所が移動する
・沢への水の供給量や方向が変わる ⇒ 井戸の水位低下
・切り立った法面から新たに湧水が発生する
このような下流に対する影響を未然に防ぐ為、建設工事を実施する前段階の調査(事前調査)にて、
①水文環境の実態把握(水文調査)
②施工による影響予測
③対策立案
が必要になります。
地下水の量が減ったり寸断されたりすると、井戸の水位が低下したり、湧水が出なくなったり田んぼに流れる
水がなくなったりして、地元の方の生活が困難になります。
触針式水位計で井戸の水位を計測します(水に触れるとピーっと音がする機器です)。
水位がどんどん低下しているなどの異常な兆候がないか、現地で確認します。
また、大阪に井戸なんてあるの?
というご質問を多く頂くのですが、都市部近郊の各ご家庭や事業所で驚くほどお持ちです。
私も初めはびっくりしました。
大阪府が進めている事業の中に、災害時協力井戸の登録と言うものがあります。
これは、大規模な地震等の災害により、水道の給水が停止した場合に、飲料水以外の生活用水として、
近隣の被災者へ井戸水を提供いただける各ご家庭や事業所にお願いして、有事の前に予め登録する制度です。
その登録数によると、大阪府全域では1471もの井戸が挙げられています(平成29年3月31日現在)。
※枚方市が137個と一番多い。
ここで挙げられた井戸の数はほんの一部ですので、大阪府では上記の数倍から数十倍の井戸があると思われます。
皆さんたくさんお持ちですね!!
ため池も重要な水源です。
たくさんの湧水が流れ込み、さらに地下へも浸透していきます。
その水位を定期的に確認することで、周辺の異常を把握します。
地下水の状況を知る為に、ボーリングで孔(あな)を開け、24時間1年中水位を観測します。
自記水位計という機器を設置します。
データの取り出しにはパソコンを接続させ、機器の異常なども確認します。
実生活では、水質が一番大事!!
各家庭の井戸などで、主に濁りの状況を数値で確認して、生活用水として利用できるか監視します。
また、数ヶ月おきに採水サンプルを採取して、分析室で詳細に大腸菌や重金属(イタイイタイ病で有名なカドミウムなど)
が混入されていないか念入りに調べます。
飲み水でなく畑の水やり用だとしても、重金属などが含まれた水は使いたくないですよね。
当ブログで度々登場している流量観測(用水路での流量観測の様子はこちら)。
河川の上流でも水量を測定して、どれだけ下流に流れているか調べます。
下流の状態も調べることで、水の入りと出が分かるので、水収支管理に重要なデータとなります。
街中で流量観測をします。
上流から下流までの水量を計測し、その途中にある井戸やため池の水質を確認していくことで、
地域の地下水の状況をモニタリングしていきます。
現地調査では、各ご家庭の大事な井戸を触らせて頂きますので、失礼がないように調査を進めます。
心温まるお声がけも頂くことがあり、やりがいのある仕事ですね。