水門・樋門調査(目視点検)の様子

外敵から町を守る水門

町を歩いていると、たまに見かける、水門
こちらの水門は海沿いにあったので、高潮や津波が上流の河川に入ってきて水位が上がり護岸を越えて、周囲の町が洪水になるのを
防ぐ為に作られた、防潮水門と言います。

その他の水門には、洪水の際に本川(本流)の水が支川(支流)に逆流するのを防ぐ為に作られる、制水門などがあります。
水門は有事の際にはゲートが閉められ、我々を洪水などから守ってくれる、強い味方です。
※ゲートは通常ステンレス製で、専門用語では扉体ひたいと言います。

ただ、ゲートが閉められてしまうので、上流の河川からの水もせき止められ、どんどん水が貯り最終的には
川からあふれ洪水になるという、本末転倒なことになってしまいます。

それを解決する為に、水門の近くには排水機場があり、ゲートを閉めても上流からの水を海側などに、ポンプを使って汲み出す施設があります。
よく出来てますね~。
※排水機場がない、小さい水門もあります。

水門はこのように、水の流れを制御して、我々を守る施設です。
なので、有事に備えてゲートをいつでも開閉でき、高潮などの圧力に水門全体が耐えられ、いつでもその機能が発揮できるように、維持管理することが大切です。

このような維持管理には様々なマニュアルが使用されますが、海岸沿いの水門では、海岸保全施設維持管理マニュアル(平成30年5月 農林水産省・国土交通省)
に基づき点検します。

 

変状箇所の目視確認中

水門のコンクリート部材に、ひび割れ・欠損・傾倒や、ゲート(扉体)に錆や変形がないか目視調査します。
近づいて見たり聞いたりしないと、水門に発生した異常は見えてきません。

部材が変形したことによるひび割れの発生や、ゲートの異音など、各現象から総合を判断するので、技術を持った
人間の目でないと、総合的な見地を考慮した水門の健全度が確認できません。

 

変状箇所

大阪で見かけた、水門。
よく見ると、コンクリート壁の打ち継ぎや遊離石灰(白っぽい筋状のもの)の様な箇所から漏水しているようですね。

こういう仕事をしていると、町を歩いていてもこんな写真を撮りたくなってしまうんですよ、、、
まあ、水門管理者さんも点検で把握していることでしょう。

コンクリート部材やゲートに変状があると、水門の耐久力が落ちるので、目視点検でしっかりとその場所や規模を確認することが肝心です。

 

水門ゲートの通り道、戸当り

水門のゲートが開閉する際には、コンクリート部に溝を切った箇所にステンレス製品を取り付けた、戸当りを通って移動します。
その戸当りの中を、ゲートに取り付けたローラーがくるくると回って進みます。

 

戸当り周辺の様子

戸当りにおいて、目に見えて分かりやすくて起こりやすい重大な変状は、牡蠣などの付着物・流木の詰まり・土砂の堆積の有無になります。
ゲートは有事の際に閉まってなんぼのものですが、これらがあると完全にゲートが閉まらず、その機能を発揮できないことがあります。

なので、点検も大事ですが定期的な清掃が必要になります。
特に流木などが詰まると、どんどん川底に土砂が堆積していき、よりゲートが閉まらなくなります。

上の写真の様に、陸上から川底まで、ある程度見える水門は判断しやすいのですけどね。
陸上から見えない箇所にあるものや、川底まで見えないことが多い、大阪の川ではそうも言ってられません。

 

船上からの目視点検

陸上からの調査が出来ない場合、船上目視点検をします。
陸上から見えない箇所を、船で近寄って目で見て確認できるので、調査の精度がより高まります。

船は近くの漁協でチャーターしたり、ゴムボートを現地で組み立てて浮かべたりします。
基本的にはゴムボートを使用することが多いですね。

川幅や高さが狭いことがよくあり、ゴムボートだと機動力が上がります。
注意点は、牡蠣の付着物との接触によるボートの損傷・破裂です。

 

潜水調査の様子

水中部は、潜水士の出番になります。

潜水士が水中に潜り、水門基礎部(足元)の異常や、ゴミなどの堆積状況を確認します。
そこで、洪水時に流下した土石などによる、コンクリートの破損や磨耗、鉄筋の露出などを見つける場合もあります。

一般的には、陸上・船上・水中目視点検で得られた情報を統合し、報告書を以下の様にまとめます。
変状図の作成
②変状箇所の写真集
変状ランクの査定シートの作成

陸上部から水中部まで、部材毎に理解しやすい様に、まとめることが肝要です。
これらの結果を活用して、すぐに補修が必要な水門なのかどうか判断して、維持管理していきます。

 

何となく佇む、水門。
これを現地条件を考慮して、どのような構造にしたら良いか設計する者、
工場で製作する者、現地で施工する者、
出来上がった後に変状箇所を調査する者、維持管理の方法を検討する者、実行予算を検討する者。

などと、一言に水門と言っても、たくさんの人間が関わっています。
さあ、どの仕事に興味ありますか?