河川や港内、海洋で威力を発揮する、ADCP(超音波ドップラー多層流向流速計)による流況調査の方法を
ご案内します。
流況調査では、水の流れを調べます。
※流況・・・水の流れる状況のこと。どの方向に、どんな速度で水が流れているかを示す。
(調査例)
・港内で牡蠣の養殖を始めるのに、海水がうまく循環する適地なのか調べる。
・河川でどこに橋を作るのが適地なのか、流水の強弱を調べる。
・海洋で防波堤を作るのに、波が行き来する方向や強弱を調べて、防波堤の大きさや場所を決める材料にする。
これが、ADCP(超音波ドップラー多層流向流速計)です。
機種により様々な周波数があり、こちらは600kHzのADCPになります。
特に港内や海洋で使われる機材で、最大水深70mまでの、多層にわたる海水の流向・流速を測定できます。
曳航式(船などに取り付けて一緒に走ること)、設置式(海底に据え付けて、15~30日間ずっと固定し、
後に回収すること)のどちらにも使用できます。
赤い丸が、超音波を送受信するセンサーになります。
1台に付き4個あり、ここから超音波を送受信することで、3次元の水の流れのデータを得られます。
途中で障害物(魚の群れなど)があると、超音波の特性から正しいデータが得られません。
ADCPを曳航式で使用する際には、特にその位置情報が重要になります。
どこを船で走った際に得たデータなのか、特定するためです。
GPSの中でも、より精度の高いDGPSを使用することがあります。
一般的なGPSでは、誤差10m程ですが、DGPSでは50cm程になります。
DGPSの受信状況をパソコンで取得し、ADCPへどのようなデータの取り方(1mごとに海水の流向・
流速データを取るなど)をするかコマンドを送って、指示します。
DGPSをパソコンにつなげ、約10分間ずっと位置データを受信します。
そうすると実際の基準点と受信データが、どの程度の誤差があるか出ますので、必要に応じADCPで取得する
位置データを補正します。
ADCPを漁船に据え付けて曳航する際には、写真の様なはしご架台に取り付けて、舷側(船の側面)に固定します。
船の速度は、最大4ノット(約8km)。
それ以上になると、速度が速すぎて欠測になる可能性が高まります。
ADCPの頭が水面ぎりぎりか、多少沈む程度の位置で固定します。
ADCPの超音波送受信センサーが水上に出ると、欠測になりますので、絶妙なさじ加減が必要です。
ですので、波が高い場合はADCPの曳航調査には向いていません。
どうしても超音波送受信センサーが、水上に出るからです。
静穏な日に調査を実施するのが好ましいです。
河川では大きな漁船が入って来づらいので、ゴムボートにADCPを取り付けることもあります。
船舶操縦士と、ADCP操作員が同乗します。
周波数が1200kHzのADCPを使用します。
水深20mまで対応でき、600kHzより細かいデータが取れ、曳航式(船などに取り付けて一緒に走ること)、
設置式(川底に据え付けて、15~30日間ずっと固定し、後に回収すること)のどちらにも使用できます。
曳航式では、ADCPを河川を横断することで、リアルタイムに流向・流速・流量(水の流れている量)のデータを
取得できます。
海に比べて静穏な環境となりますので、調査はしやすくなりますが、操船の技術が未熟だと航跡がジグザグ
となり、見苦しいデータになります。
調査の際には、周辺の監視を含め、安全に作業をする必要があります。
河川でも場所により観光船や砂利運搬船、レジャーボートなどが航行しますので、衝突しないように、
他船の邪魔をしないようにしないといけません。
そのために地域に応じたKY活動を実施して、危険への対処方法を検討する必要があります。
KY活動・・・K(危険)Y(予知)活動。事前に起こりうる危険を洗い出して対策を取っておくこと。
河川の中でも水深が特に浅い場合、ADCPの超音波送受信センサーが、川底のゴミでこすれたりして破損の原因と
なる為、安全に移動できるように可動式の器具を取り付けました。
調査をする場所に応じ、このような工夫も必要です。
流況(水流)の様子は、このような表やグラフで、リアルタイムにパソコンの画面に出力されます。
中央 ⇒ 水深ごとの流向・流速値。
右上 ⇒ 航跡上での、とある水深の流向・流速の様子。
右下 ⇒ 河床(川底)の形状と共に、流量(水の流れている量)の様子。
を示します。
これら現場で取得したデータを社内に持ち帰り、解析して報告書にし、様々な計画に役立てます。