磯焼け分布調査の様子

藻場の分布状況調査中

藻場の分布状況調査中

沿岸部の岩礁地帯では、様々な種類の海藻が特に多く繁茂しています。
そこは藻場と呼ばれ、魚介類にとって産卵場所や餌場、外敵から身を隠す絶好のすみかとなります。

また海藻は、陸上の植物と同様に、二酸化炭素を吸収して酸素を供給したり、赤潮の原因になる
栄養塩(リン、チッソなど)を吸収するので、水質浄化の効果もあります。

藻場の分布状況調査では、藻場の繁茂状態を把握するために、潜水士(生物ダイバー)が潜って目視確認し、
どのような海藻がどのくらい繁茂しているのか、記録していきます。

健康的な藻場(カジメ)

健康的な藻場(カジメ)

繁茂している海藻の種類によって、藻場には様々なタイプがあります。

ここは主にカジメという海藻が繁茂しているので、カジメ場と呼ばれます。
カジメはコンブの仲間で、アワビやサザエの餌になります。

カジメ場で調査をしていると、アワビやサザエを多く見かけます。
それ以外にも多くの魚が泳いでおり、豊かな漁場であることが実感できます。

この海域では、海女さんによる素潜り漁が行われており、近郊の漁港の生簀には大きなアワビやイセエビが
入れられ、出荷を待っていました。

残念ながら我々調査員は、調査時にはアワビなどを獲ることは許されていません。
漁師さんには、「そこにアワビがいたか?」とよく聞かれます(笑)。

アワビの成育状況を知るために、潜水捕獲して、体長や重量を計る業務もあります。

藻場を荒らす敵であるウニ

藻場を荒らす敵

近年では、その生態系を豊かにする藻場が、どんどん減っています。

水産庁の推計によると、昭和53年(1978年)に日本全体で20.8万haあった藻場が、平成19年(2007年)
には12.5万haまで減少しています。

たったの29年間で、海藻の生えている範囲が約半分になったのです。

藻場が消失し、岩肌がむき出しになってしまう状態の事を、磯焼けと言います。
こうなると、すみかや餌を失ったアワビやサザエ、その他の魚は生きていけないため、どこかへ行ってしまい
調査時にはあまりの光景に寂しくなります。

藻場の消失原因の一つに、ウニの一種であるガンガゼの大量発生があります。
写真中の黒く見える部分は、すべてこのガンガゼです。
ここでは、岩とガンガゼしかいなくなってしまいました。

これ以上磯焼けが進行しないように、地元の漁師さんや海女さんによるガンガゼの駆除が行われます。
非常に残念なのですが、ガンガゼは可食部(食べられる部分)が少なく、商品価値が低いため、漁獲される
ことなく駆除となります。

ガンガゼ駆除の方法は、水中でダイバーがハンマーなどを使ってどんどん潰したり、火バサミを使って生きたまま
捕獲して、港まで持ち帰って処理をするという所もあります。

どちらの方法でも一度きりではなく、複数回に渡って継続して駆除を行う事が望ましいと言われています。

この調査で、地元の漁師さんの想定よりも、磯焼けの範囲が広がっていたことが分かり、事態はどんどん
深刻になってきています。

藻場を荒らす敵(ガンガゼ)

藻場を荒らす敵(ガンガゼ)

藻場の消失に歯止めをかけ、増やしていくことが海の環境保全、沿岸漁業にとって大きな課題です。
磯焼けの実態を調査し、その詳細を把握した上で対策をすることで、地元のお手伝いが出来れば嬉しく思います。