今年の夏も猛暑ですね。
土用の丑の日は過ぎましたが、あなたはウナギを食べましたか?
ウナギといえば、最近天然物が激減しているという話題をよく耳にします。
しかし、これはウナギに限ったことではありません。
養殖などの一部の魚介類では、生産量が上がっているものもありますが、
海で漁獲される魚介類(以下、漁獲対象生物)は全般的に減少する傾向にあります。
漁獲対象生物が減少すると、私たちの生活にも影響が出ます(小売店での値段が上がり、家計に直撃します)。
このままの状態が続くと、我々の日常生活に色々な影響が及んでしまいます。
それを改善する為に、資源量を回復させたりするなど、日本国内で様々な取り組みがなされています。
漁獲対象生物の棲み家を魚礁などで人工的につくったり、餌となる生物を増やしたりしています。
この取り組みを行う際に、その良し悪しを評価する判断材料として、よく行われるのが、魚介類調査です。
魚介類調査では、取り組みを行う前後で、漁獲対象生物の数や種類がどう変化したのかを調査して、その効果を確かめます。
では、我々日本人が特に好きな、ブリやアジなどの浮魚(水の中の表層や中層を泳いでいる魚など)は、どのように調査されているのでしょうか?
【魚介類調査方法】
・海岸に打ち上げられた魚介類を採取したり、試験操業を行い魚介類を採取したりして、持ち帰り種類などを調べる(標本採集調査)
・実際の業業者の操業日誌などを整理して調べる(情報収集調査)
・水中カメラ、水中ビデオを使用し、実際に潜水士が目視で観察して、生息する魚介類を調べる(観察調査)
今回は、潜水による目視観察調査について、詳しくお話します。
潜水士が、海藻の繁茂状況を観察中
綿密な調査計画を立案し、機材準備をした後、水中へエントリーします。
もちろん水中では2人一組が原則!
ちなみにこのときは、スピードを上げる為に、3人で調査を行いました。
水中では話が出来ない為、事前に役割分担を決めておきます。
1人目:魚介類の観察をして、水中野帳(水に濡れても破れない特殊な紙)に、種類や数を書き留める
2人目:海藻の観察をして、水中野帳に種類や密度を書き留める
3人目:魚介類や海藻の写真を撮影する
言葉が話せない水中ですから、潜水士(調査ダイバー)は、仲間の行動を予測して作業を行います。
海藻類の調査には、方形枠を使用します。
方形枠とは、灰色の塩ビパイプを四角に組み合わせたもので、50cm×50cm枠や、1m×1m枠のものがあります。
その枠内に生息する、海藻類の種類や被度などを目視観察して、写真に収めます。
潜水士(調査ダイバー)は、中性浮力をとれるように浮力調整をして、一定の水深を浮遊しながら調査します。
単純なことですが、この浮力調整にも経験から得られる技術が必要です。
以下、目視観察調査時に遭遇した、印象的な場面をいくつかご紹介します。
カンパチの群れに囲まれた!
調査中に魚群に囲まれることもあります。
これはカンパチです。
悪いことはしてきませんが、魚の数を数えるのが大変です。
悠々と泳ぐ、ミノカサゴ
気の抜けたような顔と、華やかさで水族館でも人気のミノカサゴもよく登場します。
縞模様と羽を広げたような胸鰭(むなびれ)で見た目にも綺麗なんですが、鰭にある棘には毒があり、刺されると痛みます。
大変危険な生物の一つで、むやみやたらに手を伸ばすと、痛い目にあうので、注意が必要です。
何もしなければ、襲ってはきません。
ちなみに、このミノカサゴは、お腹に卵を抱えています。
産卵の時期に出会ったようです。
海藻に引っ付く白いものは何?
海藻に白濁半透明な細長いものがくっついています。
これは何でしょうか?
これは、アオリイカの卵(水イカとも言う)です。
アオリイカは、ある程度の太さの海藻や沈木に産卵をするという習性を持っています。
この場所は天然の産卵場となっているのでしょう。
このような天然の藻場が繁茂している場所も、年々減少しています。
生物が住める海を取り戻したいですね。
水中カメラを構えたところ、、、
海のギャングといわれる、ウツボが現れました!
調査中に彼の機嫌を損ねてしまったためなのか、、、
かなり威嚇してきます。。。(汗)
ごめんね、邪魔して。
調査中なので、仕事を投げ出すわけには行かず、少し離れて様子を伺っていると、
水中カメラの外側を一回噛み付いた後、ようやくどこかへ行ってくれました。
大事にならなくて、良かった良かった。
このように、急に危険生物が登場して対応しなければならないという状況は、そう多くありませんが、
自然の中で仕事をしていると、ハプニングが起こります。
想定外のことが起こると対応を間違えてしまうことがある為、我々調査員は調査前にKY活動を実施して、
起こりうる危険に対する対応を定め、想定外を想定内にして安全に作業しています。