砂防関係施設点検の様子1 ~土砂災害との戦い~

土石流で民家に被害発生

土石流で道路が遮断

落石で道路が遮断

令和2年3月25日付けで、国土交通省から令和元年(=H31、2019年)の土砂災害発生件数について発表がありました。
その件数は全国で1,996件となり、昭和57 年(1982年)からの38年間の集計期間の中で、歴代4番目に多い災害件数となりました。
※土砂災害…土石流、地滑り、がけ崩れ等(火砕流は除く)

これまでの災害件数は、1 位:3,459 件(H30)、2 位:2,537 件(H16)、3 位:2,007 件(S57) となり、近年では2年連続で土砂災害が頻発しています。

また、当年10月に猛威を振るった東日本台風(=台風19号)では952 件の土砂災害が発生し、台風に伴う土砂災害としては過去最多となりました。
(これまでの最多件数は、平成16 年台風第23 号の800 件)

当年の土砂災害による人的被害者数は、35名(負傷者、死者・行方不明者 の合計)、家屋被害戸数535戸(一部損壊、半壊、全壊 の合計)となり、
人命と国民の資産が失われ、土砂災害の防止・減災が近年特に求められています。

そこで私達は土砂災害から、砂防関係施設や、治山施設により守られています。
砂防関係施設と言うと、一般的にはほとんどなじみのない言葉ですが、住宅地の山側や山間部で稀に見る砂防ダムや、崖をコンクリートで固めたもの(擁壁工などなどがあります。

これらを維持管理する為に、調査会社は、砂防関係施設健全度調査や、砂防施設点検地すべり防止施設点検治山施設点検などを実施しています。
その点検調査の際には、施設毎が持つ機能に着目し、コンクリート製であれば、ひび割れや漏水箇所、沈下等に伴う変形の有無などを目視確認して、点検個票や報告書に仕上げます。

(砂防関係施設と、治山施設の違い)
砂防関係施設
国土交通省(国交省)が定めるもので、点検方法や対象工種は「砂防関係施設点検要領(案)」にまとめられています。
対象工種:(1)砂防設備、(2)地すべり防止施設、(3)急傾斜地崩壊防止施設、(4)雪崩防止施設
治山施設
林野庁が定めるもので、点検方法や対象工種は「治山施設個別施設計画策定マニュアル」にまとめられています。
対象工種:(1)渓間工、(2)地すべり防止工、(3)山腹工(4)なだれ防止林造成(5)海岸防災林造成(防潮工)
※海岸防災林造成(防潮工)では「防潮堤、防潮護岸、消波工、消波堤、突堤」の点検が含まれますが、国交省の対象工種には含まれていません。

(地滑りと土石流の違い)
地滑り:移動速度が遅く、断続的に斜面が移動する現象
土石流:移動速度が速く、水と土や石、砂が混じり合って流下する現象

【砂防関係施設の紹介】
砂防関係施設は、「砂防設備」「地すべり防止施設」「急傾斜地崩壊防止施設」「雪崩防止施設」からなる、4種類に区分されます。

施設名称 求められる機能 必要な性能 関係する法律
砂防設備 土砂生産抑制機能
土砂流送制御機能
土石流・流木発生抑制機能
土石流・流木捕捉機能
土石流導流機能
土石流堆積機能
土石流緩衝機能
土石流流向制御機能等
砂防設備の安定性
強度など構造上の性能
砂防法
(明治30 年法律第29 号)
※参考
貯水ダムでは「河川法」が適用される。
地すべり防止施設 抑制工:地すべりを抑制する機能
抑止工:地すべりを抑止する機能
地すべり防止施設の安定性
強度など構造上の性能
すべり等防止法
(昭和33 年法律第30 号)
急傾斜地崩壊防止施設 抑制工:急傾斜地の崩壊を抑制する機能
抑止工:急傾斜地の崩壊を抑止する機能
その他:落石を防止する機能
急傾斜地の崩壊が生じても被害が出ないようにする機能
急傾斜地崩壊防止施設の安定性
強度など構造上の性能
急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律
(昭和44 年法律第57 号)
雪崩防止施設 予防工:雪崩の発生を未然に防止する機能
防護工:発生した雪崩による危険から保全対象を防護する機能
雪崩防止施設の安定性
強度など構造上の性能
地方財政法
(昭和23 年法律第109 号)第16 条